福祉環境委員会で審査された「脱原発、脱炭素と再生可能エネルギーへのエネルギー転換の加速をもとめる請願」は、「日本の再生可能エネルギーの潜在的な発電能力は、必要電力を賄うのに十分な能力がある。先進諸国が掲げる目標と共通する請願であり採択すべき。」といった賛成意見に対して、「再生可能エネルギーへの大幅なエネルギー転換は現実的ではない。送配電網の分離は電力供給の安定性が損なわれる。」といった意見の委員が多数のために、不採択とすべきとされました。福祉環境委員会の請願審査の様子はYoutubeの長野市議会公式チャンネルからご覧いただけます。
この請願の採決にあたり、不採択とすべきとした福祉環境委員長の報告に対し、反対討論を行いました。討論の録画は長野市議会ホームページからご覧いただけます。
2011年福島第一原子力発電所の事故後に、先進諸国は再生可能エネルギー電力の比率を大幅に伸ばしました。一方、日本政府は、福島第⼀原発事故まで、再生可能エネルギーの導⼊を促進する政策をほとんど行わず、2012年に固定価格買取制度を導⼊したものの、事故後に初めて改定したエネルギー基本計画では、2030 年の再生可能エネルギー⽬標を22~24%という低い⽔準に設定し、2018 年の改定でも目標を据え置いてきました。 地理的な条件が再生可能エネルギーへの転換を難しくしているのではなく、政治が再生可能エネルギーへの転換を拒んできました。
5月のG7サミットでは、IPCCの第6次報告書が提起した「2035年までの温室効果ガス60%削減の緊急性」を受け止め、1.5℃目標の実現をめざし、「2035年までに電力部門を完全に、または大部分を脱炭素化する」という合意を再確認しました。今月12日まで行われたCOP28においては、「2030年までに世界の自然エネルギー設備容量を3倍にし、エネルギー効率の改善率を2倍にする」という誓約に120か国以上が賛同。岸田総理も現地でのスピーチで、これに賛同を表明しました。請願者が求める「2035年の再生可能エネルギー電力目標80%以上」は、G7の国々が目指す電力供給の姿であり、世界の常識です。
旧独占企業の大手電力会社は、圧倒的な市場支配の力を持ち、送配電網を独占的に保有しています。その会社がそろって不正をおこない、公正な競争を阻害していました。送配電網の中立性の欠如が、送配電網の増強の遅れと、再生可能エネルギー電力の排除の要因になった可能性は否定できません。請願者が求める発電と送配電の所有権分離をすすめ、中立性を確保し、公正な競争環境の整備に着手することが必要です。
請願者の生活クラブ生活共同組合は、2016年から再生可能エネルギーの電気の共同購入を開始。脱原発を目指し、エネルギーの原料すべてを国内で自給することを目指しており、地域への貢献と自然環境に留意した発電事業をおこなっています。地域主導型の再生可能エネルギーを地産地消することで、生産と消費の好循環を生み出し、地域経済を豊かにする実践を通じて、気候危機とエネルギー危機の問題解決に取り組んでいます。
再生可能エネルギー電⼒が約20%の⽇本が、2035年に電力のほとんどを脱炭素化する⽬標に近づくのは容易ではないでしょう。しかし、この⽬標を非現実的だとして切り捨てることは、請願者の再生可能エネルギー自治の実践と、気候危機への世界の挑戦に背を向けることにほかなりません。温暖化による取り返しのつかない地球被害を抑えられるタイムリミットが迫っています。脱炭素化の実現には、再生可能エネルギーの導入を加速させる以外に方法はありません。
採決の結果、この請願は不採択となりましたが、脱原発、脱炭素と再生可能エネルギーへのエネルギー転換を求める取り組みは続きます。12月22日まで生活クラブ生活協同組合のホームぺージで署名に取り組んでいます。また、12月26日には、生活クラブ生活協同組合と信州・生活者ネットワークが長野県に対して、この請願と同様の要請を行う予定です。
おおぜいの皆さんと一緒に、エネルギー政策について考える機会をつくっていきたいと思います。
タグ: 生活クラブ, 請願, 脱原発, 脱炭素, 再生可能エネルギー, 再生可能エネルギーへのエネルギー転換, COP28, IPCC, エネルギー基本計画