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議案第71号「令和5年度長野市一般会計補正予算」を採択すべきとする福祉環境委員会委員長報告に反対の立場で討論しました。録画中継はこちらからご覧いただけます。

 補正予算に計上された「子どもの体験・学び応援モデル事業」3億6460万円は、2分の1の1億8230万円が地方創生臨時交付金、残り1億8230万円が一般会計からの支出となります。
ご存知の通り、長野市では子どもの貧困対策計画の策定にあたり、令和3年に「長野市子どもの生活状況に関する実態調査」が行われました。このアンケート調査の結果から、
・長野市の約11人に1人の子どもが、家庭が低所得であったり、経済的な理由で経験の機会が失われている状況にある。
・約9人に1人の子どもが、国の水準の相対的な貧困の状況に該当する。
・ひとり親家庭の親子は、ふたり親家庭に比べ、より困難な状況にある。
・経済的な困窮に加え、相談相手が不在、親子で過ごす時間の確保が難しい。
・家庭の所得水準の低さや、ひとり親家庭であることにより、子どもの学習や経験など生活の様々な場面で機会が奪われていたり、心理面にも負の影響を及ぼしている。
・子どもが将来大人になった時に貧困に陥る「貧困の連鎖」の可能性が高くなっている。
ということが指摘されています。

 少し長くなりますが、アンケートの一部を読ませてください。
この調査の時点で、過去1年にお金が足りなくて家族が必要とする食料が買えなかった経験があったとする割合は、全体で8.9%であるのに対し、困窮家庭で60.4%、周辺家庭では23.5%、一人親家庭では24.6%。
過去1年にお金が足りなくて家族が必要とする衣服が買えなかった経験は全体では11.5%、困窮家庭では77.6%、周辺家庭では37.5%、ひとり親家庭では32.1%。
学校の授業について、「わからないことが多い」と「ほとんどわからない」を合わせた割合は、全体では6.0%、困窮家庭では14.5%、ひとり親家庭では10.7%。
子どもを習い事に通わせることが経済的に出来ないと回答した保護者の割合は、全体で8.4%、困窮家庭で58.1%、周辺家庭で16.6%、ひとり親家庭で21.4%。
子どもを学習塾に通わせたり通信教育を受けることが経済的にできないと回答した保護者は、全体で11.4%、困窮家庭で68.2%、周辺家庭で25.1%、ひとり親家庭で30.5%。
中学2年生への質問で、地域のスポーツクラブや文化クラブ、学校の部活動に参加していない理由として費用がかかるからと回答した割合は、全体で12.1%、ひとり親家庭では20.0%。
16~17歳では、全体で9.8%、困窮家庭は40.0%、ひとり親家庭では15.8%。
うつ・不安障害相当の状態にあると考えられる保護者の割合は、全体では8.5%、困窮家庭で32.6%、周辺家庭では15.5%、ひとり親家庭では20.9%。
一番ほっとできる居場所について自分の家と回答した割合は、全体では70.0%、困窮家庭では58.2%、ひとり親家庭では60.7%。
自分は価値のある人間だと思わないと回答した割合は、全体では32.8%、困窮家庭では49.0%、ひとり親家庭では45.3%。                                                自分の将来が楽しみだと思わないと回答した割合は、全体では29.6%、困窮家庭では36.4%、ひとり親家庭では41.7%。
 この結果を、どのように受け止めるべきでしょうか。何が必要とされているのでしょうか。
今回の事業の委託先、公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン 略称CFC」は、経済状況や一人ひとりの特性に関わらず、子どもたちを多様な学びの機会によって包摂できる社会を目指しています。そのために、寄付を原資として、経済状況や災害などによって学ぶ機会を得られない日本各地の子どもたちに学校外で利用可能な電子クーポン「スタディクーポン」を提供し、放課後の教育格差を解決することに取り組んでいます。
「スタディクーポン」とセットで、専門的な研修を受けた大学生ボランティアが定期的に面談をして見守るとともに、コーディネーターの職員が、家庭・クーポン利用団体・福祉機関などと連携して、子どもたちが適切な学びの場にアクセスできるようにサポートを行います。
 自治体としてスタディクーポンでの学校外教育支援事業を導入する動きも全国に広がっています。
渋谷区では区内の低所得世帯の中学3年生に対し、学習塾等で利用できる年間20万円分のクーポンを提供し、同時に先ほどの、専門研修を受けた大学生ボランティアによる定期的な面談支援を行って利用者の相談にのっています。研究者によるスタディクーポン事業の中間評価報告も行われ、区との連携により支援ニーズの高い子どもたちにリーチできたこと、クーポンを利用した子どもたちの学校外での平均学習時間が増加したこと、学習に対して前向きになった子どもたちが増えたことなどが報告されています。
 このように、単発ではなく継続して利用でき、単に学習塾などに通う機会を提供するだけでなく、スタッフが伴奏して適切な情報提供や悩みへのサポートを行うことを大切にし、地域で通える学びの場と深く連携することで、教育格差を是正し、包摂的な環境づくりに貢献する、という事業であれば、長野市でも公費を投入する価値は大いにあると考えます。
しかし、今回の「子どもの体験・学び応援モデル事業」~このような事業は全国で初めてということですが~、この事業は、ご説明を聞く限り、CFCが全国で展開している格差を是正する取り組みとは方向性が全く違うもので、「スタディクーポン」で焦点を当てている子どもたちが使うことは難しいのではないでしょうか。
 この事業は、さまざまな体験を選んで参加できる環境にある人にとっては、よい体験になるでしょう。普段はなかなかできないこともできるかもしれません。
でも、保護者が子どもと一緒に、いろいろなメニューから、参加するところを選んで、電子クーポンを使って申し込みをしたり、参加するために送迎をしたりということが出来なければ、子どもが体験をすることは出来ません。一回体験して、子どもがそれをもっとやりたいと思っても、お金がなければ、その後続けることは出来ません。学習塾は、1万円ではひと月分の月謝にもなりません。

 「長野市子どもの生活状況に関する実態調査」から見える、保護者の支援の利用状況やニーズからは、制度を知らなかったり手続きがわからず、必要な支援が届いていない状況、困窮家庭やひとり親家庭ほど食事や学習に関する居場所の利用ニーズが高く、地域の支援団体との連携等により、継続的に子どもや家庭を支えていく必要があることが浮かび上がっています。
しかし、長野市において、こういった家庭や子どもを支えるために活動している子ども食堂や地域の支援団体からは、物価高騰の影響もあり食材が集まらなくなっていることや、運営資金が足りず、活動を縮小せざるを得ない、支援が必要な人とつながる方法がない、支援が必要な人がいても連携する先がわからない、など、公的支援がない中での厳しい状況をお聴きします。

 市は来年度以降のこの事業の継続も視野に入れています。でも、考えてください。この3億6460万円をスタディクーポン事業に置き換えたとしたら、どれだけ多くの子どもの未来が明るくなることでしょう。

 長野市には、経済状況によって子どもたちに格差が生じないために取り組むべきことがたくさんあるのではないですか?優先順位が違いませんか?議員の皆さんに訴えます。この事業に3億6460万円を使うことが、本当に長野市の子どもたちの幸せにつながるでしょうか。議員各位に、どうかもう一度考えていただくことを切にお願いし、私の討論を終わります。

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