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活動報告

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 27日に議案の採決がありました(監査委員の選任や組合議会議員、副議長の選挙、常任・特別委員会正副委員長の互選などは28日に実施)。すべての採決結果は順次長野市議会ホームページでご覧いただけます。

 私は市民のみなさんから提出された請願はすべて採択すべきとして採決にのぞみました。

 また「議案63号長野市印鑑条例及び長野市手数料条例の一部を改正する条例」について審査した総務委員会で、これを可決すべきものとした委員長の報告に反対する討論を行いました。反対討論の録画中継はこちらからご覧いただけます。この条例の改正は、マイナンバーカード提示による印鑑登録証明書の窓口交付を可能にすることと、コンビニ交付手数料(窓口交付手数料より50円引き)の特例期間を3年延長するためのものです。

市は「窓口でマイナンバーカードを提示しても交付できない矛盾の解消。」「令和3年度のコンビ二交付による証明書発行数は証明書の発行数全体の約11%であり、まだ十分な効果が出ているとは言えない。」「総務省から8月10日付けで、マイナンバーカードのメリットと利便性を実感することができ、普及促進に繋がる『手数料の減額策』について、積極的に取り組むよう各自治体に対して通知があった。」と改正の理由を説明しています。

政府はマイナンバー制度をデジタル社会の基盤と位置づけており、総務省が令和2年度に策定した「自治体によるデジタルトランスフォーメーション推進計画」の下に「マイナンバーカード普及促進事業」と「マイナンバーと個人情報の連携事業」が進んでいます。今年度末までに、ほぼ全国民がICチップ搭載のマイナンバーカードを取得することを目標としていますが、8月末時点の交付枚数は国民のおよそ半分に当たる5,966万枚。長野市は14万9,090枚、約4割の交付率です。

マイナンバーカードの普及を図るために、政府は多額のポイントを配布しています。今年6月30日から始まった、カードの取得者に買い物に使えるポイントなど最大2万円分を付与する「マイナポイント事業第2弾」の予算規模は約1兆8,000億円です。その財源は税金ですが、クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済を利用しない方、出来ない方は使いようがありません。恩恵を受けられる方と受けられない方が出てしまい、公平性の観点から疑問を感じます。何より、コロナ禍や物価高騰、少子高齢化、貧困対策などなど喫緊の課題が山積する中、ここにこれだけの税金を投入するべきなのでしょうか。

また、2022年6月に閣議決定した「デジタル田園都市国家構想」の基本方針には、自治体ごとのマイナンバーカードの交付率を地方交付税に反映させ、住民がカードを取得した率が高い自治体には交付税の配分を増やすことが盛り込まれました。地方交付税は、すべての自治体が一定の行政サービスを行う財源を保障するために、国が自治体の代わりに徴収し、財源の不均等を調整するものです。総務省は「カード取得率の高い自治体はデジタル化に伴う経費も高くなるので、交付税で手当てする必要がある。」と説明していますが、「地方固有の財源」である地方交付税を国策の推進に用いるのは交付税の精神に反するものです。

これに加え、先週、2023年度に創設し自治体に配分する予定の「デジタル田園都市国家構想交付金」の一部について、住民のカード取得率が全国平均以上でなければ受給を申請できない仕組みにするという政府の方針が報道されました。職員数が少ないために、国の普及促進策の要請に応えることが難しい自治体や、高齢化が進んでいるために努力してもマイナンバーカードを普及させにくい自治体など、自治体毎に異なる事情を抱えている現状も報道からは伺えます。一方的な普及促進策や自治体財源への締め付けは、看過できるものではありません。

政府はマイナンバー制度の多機能化を進めており、昨年10月には健康保険証との一体化が始まり預貯金口座と紐付け義務化や運転免許との一体化も検討されています。しかし、これらは国による個人情報の網羅的な把握にもつながり、漏洩やプライバシー侵害の不安について専門家からも懸念が相次いでいます。

マイナンバー制度導入の目的は、「公平・公正な社会の実現、利便性の向上と行政の効率化」とされていますが、問題は、マイナンバーと個人情報の接続とそのデータ利用の「目的」が明確化されておらず、データ管理の安全性と責任について具体的な規定が示されていないことです。例えば、国民が自分の健診結果をマイナポータルで確認できるようになることの他に、そのデータを誰がどんな目的でどのように利用するのか明確に示されていません。また、公務員がデータを目的外に利用したり、外部流出させた場合、どんな罰則を受けるのか。生じた被害に対する賠償はどうされるのか。国や自治体の責任や保証についても明確に示されていません。

取得が進まないのは、国民がカードの利点を実感できず、個人情報の漏洩やプライバシーの侵害の不安が払拭されていないからです。闇雲に普及を急ぐのではなく、まずは国と地方自治体がそれぞれに具体的で厳しい情報セキュリティポリシーを規定し、情報社会の進化に合わせてそれをアップデートして、個人情報の利用について国民の理解を得ることが必要です。以上の反対討論をおこないましたが条例案は賛成多数で可決されました。

 今後、マイナンバーカードの問題について市民の皆さんと意見交換をしたり、学習会などをおこなっていきたいと思います。

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