ひとつめは「災害時の性被害を防ぐ取り組み」について質問しました。録画中継はこちらからご覧いただけます。
災害時の性暴力は阪神淡路大震災のときから問題提起されていましたが、一部のメディアから「デマ」として報じられ支援者に対しても批判の声があがったという経緯があります。それを踏まえ、2011年東日本大震災が発生した直後からは、国内外の専門家やNPO等の団体が協力して女性のための支援ネットワークを結成し、日本国内で初めて「災害時の女性や子どもに対する暴力」の実態調査が行われました。その結果、10代から60代までの女性や子どもが、様々な場所でDVや性暴力を受けていた事が明らかになりました。
また、東日本大震災後の2012年に開設された24時間の無料電話相談「よりそいホットライン」が、2013年から18年の5年間に女性専用ラインによせられた36万件あまりの相談内容を分析したところ、岩手、宮城、福島の被災3県からの相談の5割以上が性暴力に関する相談で、10代から20代の若年層の被害も全体の4割に上ったという衝撃的な報告があります。事務局長の遠藤智子さんは、「別の場所で災害が起こるたびに、そのニュースや情報を目にして、被害を受けた経験を思い出し、不安や恐怖からフラッシュバックや不眠に苦しむ女性もいて電話相談が増加する傾向がある。窓口では、相談内容に応じて警察や病院・民間支援団体を紹介するなど、関係機関につなぐよう対応しているが、今後は、女性や子どもたちが『震災弱者』とならないよう、日ごろから社会全体が暴力の根絶に取り組むことが必要。」と対策を呼びかけています。
熊本地震の際は、地震のあった2016年度に熊本県警が把握した避難所や周辺でのわいせつ事案は約10件に上り、被害者が申告しなかったり避難所の管理者が通報しなかったりしたケースもあるとみられ、全容はつかめていません。支援団体が相談先などを載せたポスターを県内700箇所の避難所に掲示したり、県警が巡回を強化したりしましたが、被害は防ぎきれませんでした。
東日本の被災地で性暴力被害の予防啓発活動などに取り組んだNPO法人「しあわせなみだ」の中野宏美代表は、「不特定多数が避難所に集まるなど、災害時は性暴力被害のリスクが高まる」と指摘します。また、「減災と男女共同参画研修推進センター」の浅野幸子代表は「性暴力は平時でさえ訴えにくい。災害時は集団生活で個人情報が漏れることを恐れて相談をためらったり、相談を受けた人も精一杯で被害者を支援につなげられなかったりするため、さらに潜在化しやすい。」「多くの市民が防災研修に参加し、災害時に性暴力が起こり得ることや、照明の配置など対策方法を知る機会を設ける必要がある。」と提言しています。
災害時の性被害については、まだまだ一般に知られていない状況だと思います。「魂の殺人」とも言われる性犯罪がけっして起こることがないようにするために、まずは職員や関係団体・市民が学ぶ機会を作ることが必要です。知ることによって実際に避難所の運営に関わるときに、「性犯罪からどう守るか」という視点を持てるようになります。
作成中の長野市の避難所運営マニュアルに「性犯罪防止」の取り組みを明記することと、避難所や被災地での性犯罪について職員、関係団体、市民が学ぶ機会をつくることを提案しました。
これに対して市は、内閣府の「避難所運営ガイドライン」や「防災復興ガイドライン」を参考に、避難所運営マニュアルに「性犯罪の防止」を記載し、窃盗や詐欺なども含めた犯罪防止のために「警察による巡回」を記載するとのこと。また女性の視点が反映されるよう避難所の運営に女性職員を配置する事や、避難所運営委員会には女性に参画してもらうことを明確にするとしています。そして、避難所運営マニュアルに基づき、性犯罪について職員が学ぶ機会を確保したり、市民講座や訓練なども実施していく考えがあるとの答弁でした。
災害時には弱いところへ暴力が向かう。残念ですがそれが現実です。性被害は社会の問題。性犯罪が起きないよう対策に全力で取り組むことを市に強く求めました。
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