3月定例会では、長野市の教育費について質問しました。
教育費は増えているものの、学校の老朽化や子どもたちの学びの環境には、まだ多くの課題が残されています。
子どもたちが安全に過ごし、豊かな経験を得られる環境をどう整えていくのか、その点について市の考えを聞きました。質問の録画はこちらの長野市議会ホームページでご覧いただけます。
本定例会に提出された令和8年度予算案の規模は過去最大です。
その内、教育費は341億3千万円で、前年度から25.1パーセント増えていますが、増額の中身は、南長野運動公園総合運動場改修42億6千万円(前年度比30億4千万円増)、国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会施設整備等105億1千万円(前年度比30億円増)、飯綱高原スポーツ拠点整備9億円(皆増)、学校給食食材費購入20億6千万円が主なものです。
小中学校費、社会教育費、図書館費、学校給食施設管理費、教育委員会事務局費など教育委員会所管の予算は132億1千万円(前年度比6億2千万円の減)で、教育費全体の38.7%です。


毎年度当初に、長野市立の各小中学校から教育委員会に「学校施設改修要望書」が提出されています。その内容を確認すると、優先順位を付けて要望を出しているにもかかわらず、改善されていない事例、改善までに長い時間を要した事例が数多く見受けられます。
例えば、以下のような内容です。
・体育館、校舎の天井、壁からの雨漏りでバケツを置くなどして対応しているが床が滑りやすく大変危険。
・渡り廊下の雨よけカーテンが古く、雨や雪が入り込む。床面が滑りやすく転倒の危険がある。
・天井腐食によりモルタルの塊やはがれた天井ボードが落下してくる。
・校舎の入り口、手動による昇降型のシャッターが老朽化し昇降が困難。児童の通行上の安全にも不安がある。
・壁布が剥がれている。シミだらけで、とても汚い。
・転落防止柵が無い窓際にファンヒーターや棚が設置されており、転落の危険性が高い。
・使用不可となっている校庭遊具を撤去して、新しい遊具を設置してほしい。
・断熱材の無い壁に結露が起こり、子どもたちの着替え袋や荷物を濡らしてしまう。
・内線電話が古く、通話が不安定になることがあり、緊急対応が必要な際に迅速に対応できないことがある。
・児童ロッカーが古く、背板が外れていて子どもの持ち物が中に落ちてしまう。
・上履き入れロッカーが狭く、高学年児童の上履きを入れることができない。
・体育館前と校舎のトイレ老朽化が進み、器具の不具合や悪臭、衛生面から問題がある。児童への学校アンケートにより、トイレ使用を我慢していることがわかった。2019年に体育館が避難所となり体育館前のトイレが解放されたが、あまりの古さと臭いで使いたくないとの訴えがあった。また、衛生面等で保健所より指摘があった。この1年間の中でも漏水、水が流れない、水が噴き出すなどの不具合が何度もあった。
・非常階段の踊り場の床面に錆が発生し強度が不安。
・教室壁面の穴から発生した亀裂が徐々に広がっている。拡大し、壁の崩落につながる前に補修をお願いしたい。
・分電盤から唸るような音。一日に何度もブレーカーが落ち、授業に支障をきたしている。
・児童がひっかかりケガをしたフェンスを交換してほしい。
・体育館の床が老朽化でささくれ立っている箇所がある。木の目と釘が持ち上がり危険。支柱穴の蓋が固定されず開いてしまうことがあり、児童の足が引っかかる危険がある。
・火災報知器の一つが故障し、火災時に作動しない状態。
・校舎外側の壁が剥がれ落ちてきており児童に当たる可能性がある。
・理科室床の止水栓ふたが閉まらない。ガムテープで止めているがはがれやすく、児童がけがをする可能性がある。
・体育館のバスケットゴールにネットがかけられない状態。ゴール板がひび割れていて危険。故障して格納できず、バレーボール等ネットを張る競技ができない。 このほかにも様々な要望が毎年提出されています。
学校は、子どもたちの学び・生活の場であり、災害発生時には地域住民の避難所としての役割も果たす施設であるため、適切な維持管理を行い、安全な施設環境を確保する必要があります。ご紹介したような各学校からの要望に対しては、速やかに対応を行わなければなりません。
長野市公共施設個別施設計画によると、小中学校施設は築30年以上の建物が7割、50年以上が経過している建物もあります。計画に沿って長寿命化改修を進めることはもちろん重要ですが、いずれ改修するからという理由で、子どもたちの安全や適切な学習環境が守られない状態をそのままにしておくことは、あってはならないと考えます。
教育委員会に、学校施設の維持管理の現状について、各学校からの要望に対応できていない理由と、令和8年度の対応の予定について質問しました。
市の答弁から、学校施設の改修について、学校要望に加え法令対応や緊急修繕を優先し、安全性・緊急性を踏まえて対応しているというものの、年間500件前後の要望のうち、対応は約半数にとどまっており、令和8年度も同程度の予定。大規模改修を要する案件は長寿命化改修等で対応するため、子どもの安全に関わる課題であっても即時対応が難しく、迅速に改善されない現状が明らかになりました。
また芸術鑑賞に関する予算についても質問しました。
子どもが健やかに育まれるためには、安全な学校施設整備や教育体制の充実に加えて、子どもたちが文化芸術に触れる機会を保障することも大切です。
文化庁が実施する「学校における文化芸術鑑賞・体験推進事業」は、住んでいる地域や家庭の事情など様々な格差にかかわらず、全ての子どもたちに文化芸術を知る、触れる機会を提供する役割を担っています。事業の一つである学校巡回公演では、音楽、演劇、舞踊、伝統芸能、メディア芸術のトップレベルの団体が小中学校を訪れ、公演、体験プログラムを実施しています。令和6年度は全国の1672校で実施されました。
実施した学校の先生からは次のような感想が報告されています。
・オペラの歌声や衣装を目の前で鑑賞することができ、子どもたちはその迫力に圧倒されていました。地方の小規模校であるため、芸術鑑賞に触れる機会が少ない子どもたちにとって貴重な経験になりました。ワークショップで指導していただいた歌を一緒に歌うという体験にも興味を持って取り組むことができました。
・CDや動画での鑑賞では得られない学びがありました。歌を歌ったり、楽器を演奏したりする際に「楽団の人たちはこう演奏していた」「こんなふうにしたほうが、曲に合う」「きれいな音を出すにはこうしたほうがよい」というように、表現への取組が変わった児童がたくさんいました。
・劇団員が来校され、会場設営、機材準備、照明、生演奏による音響、役者さんの歌と演技のそれぞれが分担・協力してひとつのステージが作られる様子が、児童によく伝わりました。
・開演から終演後、次の日も子どもたちの目はキラキラ輝いていました。4・5・6年生は共演することができて、みんなで1つのものを決める話し合いや仲間と協力すること、人前で発表する貴重な経験、みんなでやり遂げた達成感を味わうことができたと感じています。
・普段の学校生活では味わうことができない、素晴らしい感動的な体験となりました。涙を流して感動する児童が複数おり、「また見てみたい」「将来、ミュージカルに出てみたい」などの感想を得ることができました。
・本物に触れ、子どもたちの感性に響くとても豊かな体験となりました。実際に舞台上で参加できた子どもたちは忘れられない体験として心に残ると思います。めったに舞台芸術を鑑賞できない子どもたちにとっては貴重な経験で、普段と違う子どもたちの目の輝きが見られてとてもよかったです。
長野市では、長野上水内校長会が実施していた芸術鑑賞への補助金が令和元年度に、選択と集中の考え方により廃止されました。学校が独自の活動に使うことのできる学校マイプラン推進事業補助金も減額され、1校あたりわずか4万円です。劇団四季による「こころの劇場」には多くの学校が参加していますが対象は小学6年生のみです。セイジ・オザワ松本フェスティバルや長野市文化芸術振興財団によるアウトリーチもありますが、長野市のすべての子どもたちが一流の文化芸術に触れることのできる機会は、まだまだ足りないと思います。
文化庁が小中学校を対象に行った調査によると、小中学校が文化芸術事業を継続するために必要なことは「実施にあたっての十分な予算と体制が得られること」との回答が多く寄せられています。
長野市においても、子どもたちが学校で文化芸術に触れる機会を保障するための予算と支援体制が必要です。市の考えを聞きました。
市は、子どもたちが文化芸術に触れる機会について、各学校の主体的な判断に任せていると説明していました。また、文化庁の事業やアウトリーチなどの機会を紹介し、希望する学校が参加できる仕組みをとっています。しかし、これらはあくまで機会の「紹介」が中心で、すべての子どもたちに十分な体験が保障されているとは言えません。文化芸術に触れる機会を広げるための予算や支援体制について、より積極的な取り組みが必要です。
最後は市長に、学校施設の維持管理、学校での文化芸術活動に関する予算を確保することを要望しました。市長の考えは、学校施設や文化芸術活動の重要性は認めつつも、対応については従来の対応の延長にとどまるというものでした。文化芸術については学校まかせの姿勢です。予算の確保についても具体的な拡充方針は示さず、課題解決に向けた踏み込んだ答弁はありませんでした。
今回の質問で、学校施設の老朽化や文化芸術に触れる機会の不足といった課題が明らかになりました。これらは、子どもたちの安全と成長に直結する重要な課題です。優先的に取り組む必要があります。学校施設の維持管理については、緊急対応だけでなく、日常的な不具合にも迅速に対応できる体制と予算の強化が求められます。各学校から多数寄せられている改修要望に対応するための計画的な予算確保と、優先順位の見直しが必要です。
また、文化芸術活動については、学校まかせにするのではなく、すべての子どもたちに文化体験の機会を保障する視点に立った施策への転換が必要です。その基盤となる予算や支援制度を市の責任で整備することが求められます。
重要なのは、教育費全体の配分のあり方です。新年度予算案は、スポーツ施設の整備に多額の費用が計上されている一方で、学校現場の環境整備や文化芸術教育への予算は十分とは言えません。大規模なスポーツ振興策の前に、日常的に子どもたちが過ごす学校環境の安全確保と教育を保障するための施策を実施すべきです。