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活動報告

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 「香害」という言葉を見聞きしたことはありますか?香害とは、合成洗剤や柔軟剤などに含まれる香料によって頭痛や吐き気などの身体の不調が現れることです。身近にある生活用品の香りや抗菌・消臭成分で体に不調が出る人がいます。だれもが知らぬ間に健康への影響を受けている可能性があります。12月定例会ではこの「香害」について質問しました。質問の録画はこちらの長野市議会のホームページからご覧いただけます。 

 柔軟剤には、香りを長持ちさせるためにマイクロカプセルを使用しているものがあります。マイクロカプセルには、メラミン樹脂やウレタン樹脂などの「プラスチック」が多く使用され、中身には香料や抗菌・消臭成分などが内包されています。壁材として使われるプラスチック素材がメラミン樹脂の場合は「ホルムアルデヒド」、ウレタン樹脂の場合は「イソシアネート」という有害化学物質が出るとの報告があります。中身の合成香料はほぼ石油由来で、ホルモンに影響を及ぼす添加剤が含まれることもあります。抗菌・消臭成分は、ヒトの細胞にもダメージを与えるような毒性が強い化学物質です。カプセルのサイズは、花粉やpm2.5前後。目に見えないほど小さく、多くの柔軟剤や合成洗剤などには「キャップ1杯に1億個」も配合されているといわれています。洗濯で繊維に付着し、摩擦や熱によって壁材が次々と時間差で破壊されることで、洗濯後も芳香や消臭作用が長く続く仕組みです。空気中に漂う微細なカプセルを周囲の人が吸い込んでしまい「化学物質過敏症」を発症するケースが増加の一途をたどっています。しかし、どの製品にマイクロカプセルが使用されているか?どのような素材のカプセルが使用されているか?などの表示はありません。香りが長持ちすることをうたう柔軟剤のテレビCMでは小さく注意文言が示されるようになりましたが、国による成分表示の義務付けや有害物質の規制がない現在、仕事に行けない、学校に行けない、人の集まる場所に行けない、など日常生活に支障をきたし、労働や教育の機会を奪われている人が増えています。

 消費者庁など5省庁が香り製品自粛を求めるポスターを2021年に作成、配布しました。今年10月には、厚労省が所属団体を通じ医療従事者への周知依頼文書を発出しています。佐久市、安曇野市など各地の自治体が啓発や対策に動き出しています。長野市でも、庁内での学習会や公共施設、教育機関などへのポスターの掲示、ホームページでの周知など、早急な啓発活動が必要です。市の取り組み状況を教育委員会、こども未来部、総務部と市長に質問しました。以下に答弁の概要をまとめました。

 教育委員会は、香りに対して敏感だと思われる、またはそのような申し出があった児童生徒が複数の小中学校に在籍していることを昨年度に調査を実施して把握していました。今年8月に、省庁作成のポスターを各校へ配布し、校長会では、香りに困っている児童生徒がいることについて教職員への周知を依頼し、該当する児童生徒がいる場合には適切な配慮をするよう依頼。また昨年度から、全小中学校の教職員が閲覧できる校務支援システムの掲示板で、香害についての理解や、化学物質過敏症に関する授業の実施について提案するとともに、特別支援教育や人権教育に関する教職員向けの研修でも具体的な事例を基に適切な配慮について周知を図っているとのことです。また保健だよりや、必要に応じた学級・学年・学校だよりを発行して全校児童生徒への正しい理解をすすめ、今後も教職員向けの研修等をとおして、積極的に情報提供を実施し、周知をはかり、香りに困っている児童生徒の正しい理解と適切な配慮につながるよう努めるとの答弁がありました。 

 公立保育所では、昨年10月に省庁作成の啓発ポスターを各園に掲示し、各園の園だよりに掲載。私立保育園、認定こども園、幼稚園などには、昨年12月に保育幼稚園課が発行した保健だよりで香害について記載。今年7月には公立、私立園などに啓発ポスターを配布したとのことです。来年1月に発行する保健だよりに香害について掲載する予定で、引き続き香りへの配慮に関する啓発を進めると答弁がありました。

 児童館・児童センターでの啓発活動は今までありませんでしたが、今後は学校での取り組みと併せて啓発から進めたいとの答弁がありました。

 市役所本庁舎のトイレ等の手洗い場に設置しているせっけんは、無香料のものに変更済みで、支所でも順次せっけんの切り替えを進めているとのこと。今後、香害について理解するための掲示を洗面台の付近に設置するなどの取り組みの検討を進めていくと答弁がありました。

 市有のスポーツ施設などには、健康影響への配慮が求められていることを所管の担当課を通じて施設の指定管理者に伝え、柔軟剤など生活用品の人工香料製品の使用の制限や、啓発ポスターの掲示について協力を求めたとのことでした。

 市長からは、市が作成したチラシや保健所のホームページ等を活用し、保健所等の窓口や、妊娠届け、マタニティセミナー等の機会もとらえて周知に取り組んでいると答弁がありました。公立保育所では、無香料または香りが残りにくいハンドソープを使用し、職員は化粧や服装等に強い香りがするものを使わない取り組みを実施しているとのことです。また学校では、配慮が必要な児童生徒に、相談室への登校、備えつけのハンドソープ以外の製品の使用、進学する際の小学校と中学校との連携の確認などの対応をとっているとの答弁もありました。今後も関係部局と連携して対策に取り組む姿勢が示されました。

 化学物質過敏症は、化学物質の代謝能力を超えると誰もが発症する可能性があります。診断方法や薬での治療方法が確立していないため、最も有効な予防方法は、原因となる化学物質に近づかないこと、化学物質を含むものの使用を控えることです。

 日本医師会発行の「健康ぷらざNo.508」に香料による健康被害が取り上げられています。「香料を使った製品は、育児保育の現場でも使用されており、不調を訴えることのできない乳幼児に将来どんな影響があるのかも心配です。まずは使用している香料製品が、あなたに、または周囲の人に健康被害を起こす可能性があることを認知してください」と注意喚起しています。子どもたちの健康を守るためにも更なる取り組みを進めることを要望しました。

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