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活動報告

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 9月定例会では、本年度からスタートした「こども総合支援センター」について質問しました。長文ですが、質問と市の担当部局の答弁を掲載しました。長野市議会ウェブサイトで質問の動画をご覧いただけます。こちらをクリックして下さい。

<質問> 6月定例会の個人質問で、子どもの権利条例について、市長は「子どもの権利を守る具体的な仕組みとしては、相談と救済という二つの大きな場面があり、救済については長野県子ども支援委員会において専門性の高い調査・審議が行われることから全県を統一した機関に委ねることが望ましいと考える。こども総合支援センターが子どもの権利を守るための相談窓口ともなる。」と答弁されました。県と市の連携により子どもの権利が守られることを望んでいます。

 残念なことに、本来、子どもにとって安全な場所であるはずの学校で、子どもの権利が奪われてしまうこともあります。もし、こども総合支援センターに、学校の先生からの体罰、性暴力などの相談が寄せられた場合は、どのように対応するか。こども未来部長に聞きました。

<こども未来部長> 「あのえっと」の相談対応については、開設から5か月が経過する中で大きく分けて3つのパターンで行っている。

 一つ目は、子育てのアドバイスを求められるなど、いただいた相談に対し会話のやりとりの中で制度の紹介、庁内の他部局との仲介をするなど単発で課題や悩みが解決し、その後のフォローや連携の必要がほとんどないもので、相談の多くがこれにあたる。

 二つ目は、不登校や発達相談等、学校や園、その他の機関などとも連携を取りながら課題の解決を図る相談。8月までの相談のうち、約3割は庁内他部局、学校、園などと連携して対応にあたったものだが、こういった相談もあくまで相談者ご本人に情報共有や連携について同意をいただいた上で相談者に配慮しつつ解決を図ることとしている。

 三つ目は、いじめや虐待など相談を受けた瞬間からその度合いを判断し、関係機関により課題の解決に向けて動き始める必要のある相談。このケースは、相談者の同意の有無にかかわらず関係機関への情報共有が必要となり、児童虐待の48時間ルールのように迅速な対応が求められるもの。質問の、学校の先生による体罰、性暴力などの相談が寄せられた場合の対応については、現時点では相談事例はないが、該当する相談を受けた場合には、相談事案の緊急度合い、内容等の情報をまずは教育委員会と共有することが対応の初動と考えている。「あのえっと」は、これまで教育センターの教育相談を担当していた指導主事2名を配置したほかに、教育委員会学校教育課の指導主事2名が併任となり、解決に向けて今まで以上にスピーディな対応が図れるようになったものと認識している。

<質問> 平成22年12月長野市議会定例会で、元市立中学校教諭の不法行為に対する市への損害賠償等請求事件の和解金について議案審査が行われました。このときの経済文教委員会委員長報告に「委員会の総意として、学校現場において二度とこのような不祥事が起こらないよう、学校関係者を上げて再発防止に努めるよう強く要望するとともに、今後、再発防止等について改めて本委員会並びに定例教育委員会へ報告するよう求めたことを報告する」とあります。これを受けた経済文教委員会と定例教育委員会は秘密会でしたが、内容について今回教育委員会に確認したところ、今後の対応検討事項として「児童生徒やその保護者からの相談を受けとめ、解決するための望ましい体制制度について、第三者機関の必要性や在り方も含めて真摯に調査研究を進めたい」と示されたということです。

 この事件で教諭から被害を受けた生徒は、学校に相談することができませんでした。

 この生徒と保護者は、子どもがこのような辛い思いをすることが二度と起こらないために、子どもの権利が守られる相談・救済の仕組みが整備されることを今も強く願い続けておられます。しかし依然として、先生からの体罰、性被害など学校での人権侵害について、先生や教育委員会には相談出来ないと考える子どもは多いと思います。1人1台タブレット端末を使った相談フォームも、学校や教育委員会に言えないことは相談できません。経済文教委員会への報告で「真摯に調査研究を進めたい」とされた「児童生徒やその保護者からの相談を受け止め、解決するための望ましい体制制度」は実現されたのか。教育委員会に聞きました。

<教育委員会 教育次長> 市教育委員会では当時、市立学校において、決してあってはならない不法行為が起きたことを大変重く受け止める中で、毎年被害保護者と懇談を重ねてきた。懇談では体制に関わる進捗状況や、被害保護者のご意見や願いをその都度共有し、体制作りのあり方について理解を図りながら意見交換を重ねてきた。そのなかで「第三者機関については、第三者性や専門性も大事なことであるが、それと共に、相談の窓口をより充実させていくことも重視していかなければならない。」という意見が出されました。更に、相談する場所がなく、周知も十分にされていない状況を改善することや、じぶんから悩み等を発信できるようにするためにはどうすれば良いのか等、自分を守るための教育のあり方についてなど、その必要性を共通理解し、その事柄についての検討を進める中で体制づくりに努めてきた。このことを踏まえ直ちに実施したこととして、学校以外の相談窓口を本市教育センターに位置付け、相談を受け付けている場所や電話番号を表示した「ひとりで悩まないで あなたの話しを聞かせてほしい」というメッセージを添えた子どもが身近に感じられるようなシールを作成の上、小学校4年生以上の全員に配布し、筆箱など見やすいところに貼ることができるようにするなど、相談窓口の周知徹底を図るとともに、学校に直接相談しづらいと感じている子どもたちにも、相談しやすい環境づくりに努めてきた。そして現在に至るまでにも、定期的に保護者との懇談を続けており、その都度情報交換やご意見等を真摯に受け止め、解決するための望ましい体制づくりとして主に3つの視点から取り組んできた。

 一つ目は、市教育委員会独自の体制づくりについてで、まず以前から各校に指導してきた学校の危機管理等について、平成20年に学校の危機管理マニュアルとしてまとめ、児童生徒や保護者の相談への対応を、教職員の体罰、不法行為などの項目も含めた形で体系化し、あらためて各校へ指導している。また本マニュアルは定期的に見直しを行い、現在まで6回の改定を行って、より現状に即した形で実践的なものにしている。相談については必要に応じてスクールロイヤーや大学教授など、外部の専門家に相談したり、助言を受けたりすることができる体制を整えてきている。また各校に子どもたちがいつでも気軽に相談できる窓口を常設するなど、体制整備を各校に指示するとともに、教職員の非違行為防止、綱紀粛正などに関わる研修を計画的に1年間を通して実施するよう指示し、報告を求め指導し続けている。また平成24年からスクールソーシャルワーカーを市独自で配置し、連携する中で学校が把握していない情報はないか、子どもや保護者が学校に言えず困っていることはないかなどについて情報共有を定期的に行っているところ。

 二つ目は、本市関係部局や県との連携体制づくりについて。令和3年度末までに本市教育センターに常設していた子どもや保護者が様々な悩みについて相談できるための窓口を発展的に解消し、こども未来部のこども総合支援センター「あのえっと」に統合し、令和4年度から相談窓口を一元化している。また、県の子ども支援センターとの連携の中で本市へ情報が寄せられた際には、関係部局とすみやかに情報共有をしたうえで、ケースごとに必ず事実を確認し、関係部局等とのチーム体制のなかで適切に対応する事となっている。その他、中学校区毎にスクールカウンセラーを配置し、子どもや保護者がいつでも相談できる体制にするとともに、スクールカウンセラーが定期的に学校訪問できる仕組みも作っている。

 三つ目は、各校の体制づくりについての指導。先ほど申し上げた学校内の相談窓口の常設に加え、本市の保健所とも連携してSOSの出し方教育に確実に取り組むよう指導してきている。内容については、教材等を活用しながら悩んだり心が疲れてしまったりした時、あなたの周りにも悩んでいる人がいるかも。など様々な視点で対処方法を学ぶことに加え、学校や教育委員会に相談できない時の相談窓口についてなど、具体的に子どもたち自身が学んでいけるよう合わせて指導している。また子どもの何気ないサインやSOSを確実に受け止める教職員の感性や人権感覚を常に磨く研修にも力を入れ取り組んでいる。これまでに、以上のような体制づくりを行ってきたが、今後も学校や家庭、地域など、社会全体をとりまく環境が常に変化する中で、決してあってはならない様々な問題を根絶し、子どもたちと真摯に向き合い、嬉々として学びを紡いでいく学校でなければならない。市教育委員会としては今後もアップデートを繰り返す中で、子どもたちの安全で安心な学びが守られる学校、子どもたちの権利が守れる学校、子どもたちにやさしい学校を目指すべく、関係機関と連携しながら全力で取り組んでいく。

<質問> 令和3年度体罰に係る県調査の結果を見ると、長野市で「体罰あり」と答えた教職員、児童生徒、保護者の調査表枚数183件のうち、同じ案件ごとにまとめた件数が106件。そのうちで、学校が「体罰」であると判断したものが2件。「不適切な対応」と判断されたのは11件。残り93件は「体罰」でも「不適切な対応」でもなかったと判断された、ということです。受けたほうは体罰と感じていても、教育委員会や先生はそうは思っていないことがこれだけあるということです。

 子どもが権利侵害を受けたと感じても、「あなたの捉え方の問題」と言われ、子どもが孤立して苦しい思いをしている、そのときに、誰が子どもの権利の立場に立って救済するのでしょうか。

 第三者機関である長野県子ども支援センターが市町村とどのように連携するか、県に問い合わせてみましたが、「虐待事案は市町村に通告し、その後の対応を依頼。その他事案は、市町村所管課または教育委員会に対して情報提供を行う。」との回答でした。つまり、学校で起きた事案については、市教育委員会に戻ってくるということです。

 子どもから「学校で先生からの体罰、性被害があった」と相談があった時、どのように対応するかは、子どもの人権を守るために大変重要な問題です。

 これからこども総合支援センターに子どもからのSOSが来たときに、具体的にどう救済するのか、救済できる体制になっているのか、こども未来部長に聞きました。

<こども未来部長> 初めに、議員が県に問い合わせされた、長野県子ども支援センターは、子どもや保護者などから、広く子どもに関する相談を受ける中、いじめ、虐待等の人権侵害に直面している子どもからのSOSを受け止め、問題解決に結び付けるための子どもに関する総合的な相談窓口です。教育分野、児童福祉分野で相談受付経験のある専任の相談員が配置されているとのこと。また長野県子ども支援センターから市町村へ情報提供される事案は、虐待とその他に分けられているということだが、その他には不登校や学校関係など様々な内容が考えられることから、市に提供いただいた情報に関し、先ずは関係する相談支援機関が対応を検討し、支援につなげていく。また「あのえっと」に直接子どもからSOSを寄せられた場合は、相談を受けた瞬間からその度合いを判断し、関係機関と連携し課題の解決に向けてより迅速な対応をしていく。その際には子どもとの面談や保護者、関係者との調整など相談者等との信頼関係構築が必要となるが、児童虐待のように、すでに緊急支援体制が構築されているもののほか、連携や情報共有を基に支援チームを作って課題の解決にあたる。その上で、継続した支援も状況により必要になると考えている。こうした対応を図った後も状況が改善されず、子どもの権利が侵害されている場合は、県が救済のための第三者機関として設置する長野県子ども支援委員会に申し立てをしていただくことも考えている。長野県子ども支援委員会では申し立てに対して専門性の高い審議が行われるとともに、調査審議した結果、必要があると認めた時は、県や市町村等関係者に対し、子どもに対する人権侵害が行われないために必要な措置を講ずるよう勧告、要望、その他の行為を行うこととなっており、これにより子どもの救済につながるものと考えている。このような県の取り組みも考慮した上で、まずは子どもたち本人から困ったときや苦しい時はSOSを出してもらうことができるよう、こども総合支援センター「あのえっと」を周知するとともにそのSOSを長野市としてしっかり受け止め、解決を図るために必要な支援を行っていく。

<質問> こども総合支援センターは、通称を子どもたちから公募して「あのえっと」と決めました。こういった取り組みは、相談をしてもらうために大切だと思います。 勇気を出して相談した子どもが「相談してよかった」と思える「あのえっと」であってほしいと願います。

 2022年3月にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが、インターネットにより「学校生活と子どもの権利に関する教師向けアンケート調査」を実施しました。これは、現職の小学校から高校などの教員を対象として、子どもの権利の認知度・理解度と権利教育の実施状況や課題を明らかにすることを目的に行われ、有効回答数は468件でした。これによると、子どもの権利について「内容までよく知っている」と答えた教員は21.6%

「内容について少し知っている」が48.5%

「全く知らない」「名前だけ知っている」が合わせて30.0%

子どもの権利として、正しく「遊ぶ・休む権利」を選択したのは59.8%

正しく「意見を聴かれる権利」を選択したのは64.1%

「子どもは義務や責任を果たすことで権利を行使することができる」と誤った回答をしたのが27.6%

基本的人権である子どもの権利を「尊重している」が48.5%

「ある程度尊重している」が45.3%

「尊重していない/あまり尊重していない」「子どもの権利について考えたことがなかった」があわせて6.2%

子どもの権利について学ぶ取り組みを直近1年間で「特に何もしていない」教員は47.0%でした。

 子どもの権利が理解されていなくては、学校現場での子どもの権利侵害はなくなりませんし、子どもが権利を侵害されたことを先生に相談することも出来ません。これは長野市の教職員へのアンケートではありませんが、子どもの権利についての教育現場の意識をある程度反映していると思います。

 こども総合支援センターには、学校には相談できない、先生には言えない、言ってもわかってもらえない、という相談もあると思います。でも結局、不本意な形で、子ども自身が望んでいないのに教育委員会や学校に話が行ってしまった、ということにならないようにしなければなりません。松本市の子どもの権利相談室「こころの鈴」では、子ども自身が望まない限り、学校や教育委員会、保護者にも連絡が行くことはありません。「秘密が守られる」という安心の中で、子ども自身がどうしたいのか、そのためにどうしたらいいのかを考え、実行できるよう伴走型の支援を行います。これは、第三者機関である「こころの鈴」が中立的な立場で相談から救済まで担う仕組みだからできることだと思います。

 子どもの権利を守るために、教育と福祉の連携は大切です。一方で、学校や教育委員会から独立した機関でなければ子どもの権利を守れない事案もあります。そこをどうするのか、先延ばしにすることなく検討することを求めると同時に、こども未来部の考えを伺いました。

<こども未来部長> 「あのえっと」に寄せられる相談のうち、学校や教育委員会と連携、協力して取り組むことが望ましいケースがある。この場合、先に申し上げたいじめや虐待など相談を受けた瞬間から動き始める必要のあるケースを除き、相談者の方に相談の内容を学校や教育委員会に情報提供していいかどうかを確認し、相談者の意思を尊重して対応している。また現時点で事例はないが、学校や教育委員会の対応等によってもなお権利が守られていないという相談が寄せられた場合には長野県子ども支援委員会への救済の申し出方法について相談者に情報提供するなど、子どもの権利擁護救済に向けて寄り添った支援を行っていきたい。

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