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活動報告

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 質問の録画はこちらの長野市議会ウェブサイトでご覧いただけます。

 現在、子どもの権利を守る条例制定に向け、こども未来部と市議会福祉環境委員会において内容の検討が進められています。

 子どもの権利を守る条例をつくる上で重要な論点の一つに、「相談と救済」があります。
国連子どもの権利委員会では一般的意見第 2 号として、独立してこどもの権利を守る機構の設置を推奨し、繰り返し勧告を行っています。2022 年にこども基本法が成立し、翌年閣議決定された「こども大綱」では、こども施策に関する重要事項として、「子どもの権利が侵害された場合の救済機関として、地方公共団体が設置するオンブズパーソン等の相談救済機関の実態把握や事例の周知を行い、取り組みを後押しする」との方針が明記されました。
子どもオンブズパーソン(子どもの権利を守る公的第三者機関)は、子どもの権利擁護委員、子どもの権利推進委員など名称や形態は多様ですが、現在、国内50以上の自治体に設置されています。政府の後押しも加わり、これから、より多くの自治体に取り組みが広がることが期待されています。

 福祉環境委員会の審議では、委員から、救済のための子どもオンブズパーソン位置づけを求める意見や、子どもオンブズパーソンなどを考える前提として、理解、認知度、認識度を上げて子どもの権利を守ることが大事といった意見が出されました。一方、こども未来部からは、専門家および子育て関係団体等からのヒアリングでの意見として「オンブズパーソンについては、他の機関とのすみわけが難しい。学校でのいじめなどに介入することで混乱する可能性もある。介入要件を定めておく必要がある」「子ども同士のトラブルを『子どもの成長過程でのトラブル』として対応しようとしたものが、オンブズパーソンなどの専門家の介入により、子ども同士の問題からおとな同士の問題になる場合がある」などオンブズパーソンについて課題を指摘する声が報告されました。

 基礎自治体の子どもオンブズパーソンが行う相談・救済は、「調整」と「連携」が中心となります。
 子どもが困っている時、それは、その子どもが安心できない「何か」がある時です。子どもオンブズパーソンは、子どもの気持ちを丁寧に聴くことで、その「何か」を一緒に探し、安心を取り戻すために子ども自身ができることを一緒に考え、子どもが「もう安心だよ」と思えるまでサポートします。
 子どもは自分の周りにいる人々が「対立」することを望みません。ともに生活する人々が信頼しあえる関係でいてくれることが、子どもの安心につながるからです。ですから、子どもオンブズパーソンは、子どもの立場に立って、子どもを取り巻く人々や環境に働きかけて、必要に応じて関係機関と連携しながら、人と人をつなぐ「関係調整活動」を行います。

 1999 年に「子どもの人権オンブズパーソン条例」を制定した兵庫県川西市の年次報告書の中で、初代の代表オンブズパーソンを務められた野澤正子さんが次のように記しています。「私たちは、子どもオンブズ活動を通じて、訴えのそれぞれの内容や事象の背景あるいは周辺に、本人にとってのっぴきならない問題がいくつも重なり、子どもや親の心の傷を深くしていることに気づかされます。また、さまざまな生活背景を持つ子どもたちが集まる学校で、日々の困難に懸命に取り組む先生の姿にも接してきました。子どもと親と先生と、そのそれぞれが、それぞれに悩み、苦しみ、傷ついています。互いに傷つけあう関係でなく、互いに励まし、支え合うこと、互いに建設的な力を引き出し合うこと。私たちオンブズパーソンは、そういうつながりを、子どもの最善の利益を求める対話をとおして、むすびなおすことに努めてきました。子どもの福祉、学校教育、そして社会教育の横断的な取り組みによる子育ち・子育て支援の豊かなまちづくりが急がれます。」このような川西市の取り組みを参考にして、川崎市など他の自治体でも子どもオンブズパーソンの設置が進められてきています。

【議場配布した資料の説明】
 この資料は、川西市の子どもオンブズ・レポート2023の中で、「相談と調整活動」について紹介されている部分です。子どもオンブズが実際、どのように子どもに関わるのか具体的に紹介されています。

『質問1』
 令和6年3月定例会において公明党松井議員が「権利主体である子どもの意見を最大限尊重していく長野市を築くためには、子どもの権利を守る条例制定のみならず、オンブズパーソン制度の取り組みも重要」との代表質問をされた際に、「子どもの人権オンブズパーソンなども含めて検討していきたい」という市の答弁がありました。同年10月定例会で私が「相談機能を備えた子ども権利擁護委員の設置が必要」と質問した際には、「条例の具体的な検討過程において考えていく必要があるとの認識」とのことでした。
 そこで、子どもの権利を守る条例の制定に向けた検討をするにあたり、市担当課として先行事例の調査や、他自治体で実際にオンブズパーソン・権利擁護委員の方の話を伺うなどの調査研究を行ったのでしょうか。具体的にどのような形で調査をされたのかこども未来部長に質問しました。
 また、議員の勉強会や福祉環境委員会の中で、先行自治体の子どもオンブズパーソンの活動のうち、先ほど私が紹介したような「調整」や「関係機関との連携」に関する情報提供がされていない理由も質問しました。
 子ども政策課による専門家及び子育て団体からのヒアリングで出された子どもオンブズパーソンに関する課題についても、条例の制定にあたり丁寧に調査検討する必要があります。委員会の中では担当課長から、子どもの権利に深く関わる専門知識のある方に時間をかけてお話をお聞きする中でお話いただいたと説明がありましたので、調査にご協力いただくことは可能かと思います。どの自治体のどのような事案があてはまるのか、そうなってしまった原因はどこにあるのか、しっかり調査をすることは、条例の内容を検討するにあたり欠かせないと考えます。市の考えを聞きました。

(答弁:こども未来部長)『調査研究について』
 子どもの権利を守る条例の制定に向けては、議会との勉強会を3回実施して、その後福祉環境委員会において協議を進めてきている。
 市としては、条例を制定している自治体を職員が視察し、条例制定までの取組、あるいは制定後の状況などを聞いたところ。
 また、他の自治体において子どもオンブズパーソンとして活動されている方からも、実際の取組状況などをお聞きし、子どもの権利を守る条例にオンブズパーソンを位置づける場合の課題や、実際の運用に当たって検討すべき内容等について整理する必要がある事項を確認するなど、調査研究を行っている。
 

『オンブズパーソンの活動のうち、調整や関係機関との連携に関する情報提供がなされていない理由について』
 これまでの条例制定に向けた福祉環境委員会での協議過程においては、おとなが子どもの権利に対して向き合い、役割を果たすことや、子どもの権利を守る取組として、子どもの意見表明や、おとなが子どもの意見をしっかりと受け止めることの大切さ、市民の皆様に子どもの権利を理解してもらうことの必要性など、論点を整理しながら様々な議論を重ねてきた。
 現在は、相談や救済を含めた条例の構成案について協議を行っているところで、協議するべきことを順序立てながら議論を深めてきたところ。
 今後、子どもオンブズパーソンの具体的な活動等についての検討に当たり、他市の事例等の調査研究をしているので、今後、福祉環境委員会に情報提供していきたいと考えている。

『ヒアリングで出された子どもオンブズパーソンに関する課題について、どのような事案が当てはまるのか、     その原因がどこにあるのか調査することが欠かせないと考えることについて』                     

 条例制定に当たり、子どもや保護者をはじめ、専門家など様々な方から御意見をお聞きした。その際のオンブズパーソンに関する御意見は、オンブズパーソンが発意によって調査等を行う場合に、調査や調整する範囲など整理すべき課題があるとのお話をお聞きしたもので、参考になる内容として、福祉環境委員会での議論の一助になると考え、委員会に報告したもの。
 現在、子どもオンブズパーソンの具体的な役割や職務、救済に至った事例等について、ヒアリングでお聞きした課題を含め、他市の状況の調査を行っているところだが、オンブズパーソンの対応は事案によって様々であるということも分かってきているので、早急に他市の状況についてさらに調査研究し、今後の福祉環境委員会での協議に生かしたいと考えている。

『質問2』                                                   

 基礎自治体のオンブズパーソンは、子どもを権利侵害から守る予防的活動として「広報・啓発」も担っています。
12 月 10 日福祉環境委員会では、「市において子どもの権利保障を推進するためには、子どももおとなも、条例について知り、子どもの権利について理解を深める必要がある。」として、子どもの権利認知度が向上した事例として川崎市と松本市が紹介されています。
 川崎市では、人権オンブズパーソンや専門調査員が学校や児童養護施設に出向き、人権や相談事例についてPR動画を活用して説明し、直接子どもたちに人権の大切さや人権オンブズパーソンが安心して相談できる機関であることを話しています。学校では、人権オンブズパーソンが、子どもの権利やSNSでの誹謗中傷、いじめについての講演も行っています。おとなに対しても、関係団体への周知活動、教育委員会の研修、地域のイベントでの展示、二十歳を祝う会での制度紹介などを行っています。
 松本市では、周知用カードの配布、ポスター、心の鈴通信の配布を児童・生徒に配布し、児童館や児童センターへ通う子どもたちに、子どもの権利に関する学習会と相談室の紹介、大型絵本の読み聞かせをして、個別相談を行っています。子どもの権利に関する条例と相談室を周知する原稿を用意し、学校の校内放送で、放送委員や担当の先生に読んでもらっています。おとなに対しても、児童センター登録職員の研修会や市民フォーラム等で条例と相談室について理解を深めてもらえるよう講演を行っています。
 このように、子どもオンブズパーソンが設置されている自治体では、主に子どもオンブズパーソンが広報・啓発を担っており、その結果、子どもの権利条例について周知が進み、理解が深まっていることがわかります。                                      川崎市や松本市では、子どもの権利について理解を深めるための広報・啓発活動をどのように行っているのか、調査して福祉環境委員会で情報共有する必要があると考えます。こども未来部長に考えを聞きました。

(答弁:こども未来部長) 子どもの権利を守るためには、子どもの権利についての認知度を上げ、様々な立場のおとながそれぞれの役割を果たしていく必要がある。そのため、子どもの権利について、多くの市民に内容などを知っていただき、機運の醸成を図ることが大切なことと考えている。 紹介の川崎市や松本市のみならず、子どもの権利に関わる条例を制定している自治体においては、条例の内容を分かりやすく解説したパンフレットの配布や、学校やイベントなどの機会や場所を捉えての啓発などに取り組まれている。
 現在、福祉環境委員会では、条例の構成案などを協議しているが、子どもの権利を守るためには、広報、啓発が重要な役割であると議論が行われており、構成案の中にも、条例を実行するための仕組みの一つとして組み込んでいるところ。具体的な広報、啓発の取組については、川崎市や松本市を含め、先進自治体の事例などを研究し、条例の内容の検討とも併せて、福祉環境委員会に提供しながら検討したいと考えている。


『質問3』                                                   

 2 月17 日福祉環境委員会では、こども未来部から、長野市の相談・救済については、子ども相談支援センター「あのえっと」が関係機関と連携することで行うこととし、子どもオンブズパーソンの設置はしないという方針が示されました。これに対して委員からは「いじめや虐待などの権利侵害があったときに、市独自のオンブズパーソン配置も重要」、「あのえっとには限界がある。権利侵害があった時全体を調整する役割のある機関設置が重要」、「相談・救済の充実について体制を整えてほしい」、などの意見が出されています。

 長野市には子ども総合支援センター「あのえっと」がありますが、「あのえっと」は相談窓口であり、公的な第三者機関ではありません。子どもオンブズパーソンのように、他の機関から独立した立場で子どもの話を聴いて、周囲の人々や関係機関と連携協力して、子どもが安心して過ごせる環境を調整する機能を持ちません。

 また長野県には、救済機関として子ども支援委員会が設置されていますが、基礎自治体のオンブズパーソンのような、今、困っている子どもの話を聴いて、子どもが安心して過ごせる環境を調整する機能は持っていません。
長野市の子どもの権利を守るためには、子どもオンブズパーソンを設置するべきだと考えます、市の考えを聞きました。

(答弁:こども未来部長)  子どもオンブズパーソンについては、一昨日、市長から、市民に一番身近な自治体として、本市において子どもの権利侵害の救済機関として、いわゆる子どもオンブズパーソンを条例に位置づけ、設置することが子どもの意見表明に丁寧に対応し、子どもの権利を守ることに結びついていくものと考えていると表明をした。
今後も、子どもオンブズパーソンの設置を含め、条例の内容については、福祉環境委員会の委員とともに協議を進めたいと考えている。


『質問4』                                                  

 2 月17 日の福祉環境委員会の中で、条例制定の時期について「いつとは言えないが、市長ができるだけ早い時期にとおっしゃっている」と説明がありました。
早い時期に条例を作ることも大切ですが、急ぐあまり、検討過程に丁寧さを欠くことがあってはならないと思います。他の自治体では、子どもの権利の専門家や活動団体、公募市民などによる検討会を重ねて子どもの権利条例を作り上げることが多いのですが、長野市では他の自治体と違って検討会は行わず、こども未来部と福祉環境委員会で策定が進められています。なぜ、検討会を設置しないのか質問しました。

(答弁:こども未来部長) 子どもの権利を守る条例の制定については、昨年8月に開催された市議会の議会運営委員会において、こども未来部を所管する福祉環境委員会において協議、検討など審議をいただくことを決定いただいた。これまで計5回の委員会を開催していただき、鋭意協議いただいているところ。
今後も引き続き、福祉環境委員会において協議を進めたいと考えている。

『質問5』

 令和7年1月「長野市子どもの権利に関するアンケート調査【子ども】」では、問「家族や家庭以外で、どのようなところであれば相談してみようと思いますか」に対し、子どもたちは「どんな話でも聞いて受け止めてくれる」69.5%、「一緒に考えてくれる」61.6%、「自分の名前を知られずに相談できる」38.1%、「解決方法を助言してくれる」42.8%などの回答が上位に挙がっています。子どもたちがおとなに聞かせてくれた「意見」におとながどう答えるのかが問われています。
せっかく条例をつくるのですから、子どもの権利は大切、という理念だけではなく、今困っている子どもの権利を確かに守ることができる、実効性のある条例をつくりませんか。と市長に聞きました。

(答弁:荻原市長) 私としては、本市の子どもの権利を守る条例を実効性のあるものにしていきたいと考えている。
条例の実効性を担保するためには、子どもに関する計画を策定すること、国、県、関係機関等との連携を図ること、また子どもの意見表明や意見の反映、子どもの居場所づくり、子育て家庭への支援などの取組を着実に実行していくといったことが重要であると考えている。
 加えて、悩みや困り事のある子どもたちの意見が確実に相談につながり、救済されることもまた実効性担保のためには必要なことであると認識している。
このため具体的な取組といたしまして、子ども総合支援センターあのえっとを中心とした相談と救済の連携を一層強化することと併せて、子どもの権利侵害の救済機関として、いわゆる子どもオンブズパーソンを条例に位置づけ設置すると表明した。これにより、子どもの権利を守ることに結びついていくものと私は考えている。
条例の制定に向けては、引き続き、福祉環境委員会の皆様とともに協議を進めたいと考えている。


『質問6』
「相談と調整活動」について、川西市などでは子どもオンブズパーソンが行っていますが、本市でも子どもオンブズパーソンが行うのがよいとお考えでしょうか。それとも「あのえっと」が行うのがよいとお考えですか。

(答弁:こども未来部長) 今後の子どもオンブズパーソンの条例への位置づけ、あるいは設置、こういった検討にあわせて、具体的な内容等について、福祉環境委員会のほうで検討を進めたいと考えている。


最後に、「条例制定に向けて、子どもにとって最も良い相談・救済のありかたを共に考えていきたいと願っております。」と市に伝えて質問を終えました。

本定例会に、長野市子どもにやさしいまちフォーラムから「子どもの権利条例の策定にあたり『子どもオンブズパーソン』について十分な調査を求める請願」が提出されました。実効性のある条例をつくるために、市と議会、市民が共に先進事例を学ぶ機会を求める請願です。子どもの権利を守るための市全体の取り組みはもう始まっています。この請願の紹介議員として、議会の最終日に討論をおこないました。

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