12月定例会では、出産後の家庭をサポートする事業について質問しました。個人質問の録画は長野市議会ホームページからご覧いただけます。
産後ケア事業とは、退院後に体調不良や育児不安のある人を対象に、お母さんの体調管理や心のサポート、沐浴や授乳のアドバイス、赤ちゃんの発育の確認など行うもので、宿泊型、通所型、訪問型があります。国は、令和7年度から同事業について国・都道府県・市町村の役割分担を明確化し、計画的な提供体制の整備を進めていくとしています。
〇長野市でも、産後ケア事業の拡充が進められており、利用者は年々増えています。退院後に心身のケアや育児のサポートを必要とする家庭は増えており、今後も、利用しやすい制度となるよう努める必要があります。社会が変わり、赤ちゃんを育てることが難しくなっている要因がいろいろあります。
・晩婚化により、祖父母が高齢で手助けしてもらうことが難しい。
・核家族化で手助けしてくれる人がいない。祖父母も働いているか介護をしているため、里帰りしても十分なサポートが受けられない。
・コミュニティの希薄化により、産後は、おとなと会話することがほとんど無い状態になりがち。
・少子化で、身近なところに小さい子どもがいないため、赤ちゃんがいる生活をイメージしづらい。育児の情報をインターネットやSNSから得ることが多く、同じようにいかないと不安になる。
・産院で教えてもらった通りにやろうとしても上手くいかない時に、近くに「こうすればいいよ」と教えてくれる人がいないので、どうしてよいかわからなくなってしまう。
・父親の育児休業の取得率が上がっているが、母親が「やってほしい」と思うことと、父親ができることにギャップがあり、お互いストレスを感じ、産後クライシスにつながる場合がある。
・父親の育児休業終了後のビジョンが立てられず、「これから一人でどうすればよいのだろう。」と不安になる。
このような背景から、産後ケアの必要性はますます高まっており、体調が優れない、育児に不安があるという方には、ぜひ利用してほしいと思いますが、そのための課題が二つあります。
一つは、利用料の負担が大きいことです。利用料は施設により幅がありますが、例えば宿泊型の一番高い利用料は1泊すると20,000円になります。これから赤ちゃんを育てていこうという家庭にとって、かなりの負担となってしまいます。
もう一つの課題は、産後ケアを実施してくださっている病院や助産院の負担が大きいことです。経営的には採算がとれない事業だけれど、お母さんと赤ちゃんのために必要だから、という思いで実施してくださっているのですが、物価高騰や人件費の増でさらに負担が重くなっています。しかし利用者の負担を考えて利用料を据え置いてくださっているのが現状です。その結果、人手が足りなくなり、利用を断らざるを得ないケースも出てきていると伺っています。
利用料への補助率を引き上げて、利用しやすくすること、また事業者が安定的に産後ケア事業を継続できるための措置を急ぐことが必要です。市の考えを聞きました。
市の答弁→利用者と事業者双方の事情を勘案する中で国の方針にそって利用しやすい環境を整えられるよう検討する。
〇産後ケア事業の対象者の拡大について聞きました。
・多胎児、きょうだい児の利用については補助が無く、そのために利用をためらう人がいます。
・里帰り出産の人は利用できませんが、支援を必要としている人もいます。
・厚生労働省のガイドラインでは、流産・死産を経験した人も対象とされています。実際に経験した方から、体調の回復・精神面ともにサポートして欲しかったというお話を聞いています。
・父親やパートナーは母親に比べて妊娠出産や育児に関する知識や経験を得る機会が乏しく、悩みを相談できる環境もほとんどありません。父親も産後うつになることがわかってきています。
このような課題について、現状と、今後の対応を聞きました。
・多胎児、きょうだい児についての答弁→今年、市が行った産後ケア事業に関する産婦へのアンケートにおいても兄弟がいるので、利用しにくいといった声をお聞きしている。一方で、委託先によっては都合により多胎児やきょうだい児の受け入れが難しい事業所もあることから、今後、関係する事業所にヒアリングを行い、実態等を把握するところから始めたいと考えている。
・里帰り出産についての答弁→今年度より長野県助産師助産師会と委託契約を締結し、市外でも約30の助産所で産後ケア事業の利用が可能となった。県外では依然利用できない状態だが、地域子ども・子育て支援事業において、市町村の区域を超えた広域的な調整は都道府県が主となって行うことから、今後、県において実施する調整に協力することなどを通じ、対応が可能となるように努める。
・流産や死産を経験した人への対応についての答弁→産後ケア事業ガイドラインには対象者として流産や死産を経験された方も明記された。現在も利用することは可能となっている。
・父親やパートナーへの支援に関する答弁→産後ケアガイドラインにおいても父親やパートナーと母親が協力しあって、子どもを育てていくと言う意識を持つことが重要であるとされている。現在、市内2カ所のこども広場と協働で休日マタニティーセミナーを開催。第一子を出産予定で妊娠20から30週の妊婦とその家族が対象。これから父親になる配偶者の参加割合が年々増加し、令和5年度は99%が夫妻での参加だった。今年10月からは、保健センター等で妊娠届の受付に予約制を導入したことで夫婦で面談に来る割合が増えつつある。このような機会を活用しながら、男性にも妊娠、出産時の体の変化を理解し、出産後の生活を、早い段階から具体的にイメージすることでサポート方法がわかるよう啓発を行っている。父親やパートナーに対しても産後ケアを含め現在実施している様々な事業を活用しながら安心して子育てに取り組んでもらえるよう支援したいと考えている。
〇産後に家事や育児をサポートしてくれる人がいない家庭を支える事業について聞きました。
赤ちゃんを育てるのは、本当に大変なことです。出産後の母体は、赤ちゃんを体の中で育てていた状態から急速にもとの状態に戻ろうとしてホルモンのバランスが大きく変化するので、精神的に不安定になったり、イライラすることもあります。お腹の中は、大けがをしている状態とも言われています。回復するためには、十分な休養が必要ですが、赤ちゃんの世話に追われて、睡眠時間が極端に少ない状態が昼も夜も続きます。十分な栄養を摂ることも必要ですが、食事の支度もままなりません。上の子がいる場合は、その子の世話や、幼稚園・保育園への送迎などもこなさなければなりません。母親一人では、どうにもなりません。手伝ってくれる人がいなければ、母親の体や心に大きなダメージを与えかねませんし、赤ちゃんやきょうだいの養育も十分にできない状態になってしまいます。手伝ってもらえる人がいないので、もう一人産みたいと思うけれど難しいというお話を聞くこともあります。
この産後育児の大変さがようやく理解されるようになり、産後の家庭が家事支援、育児支援を受けられる事業を実施する自治体が増えてきています。長野市には「子育て世帯訪問支援事業」がありますが、利用できる対象者が限定されています。同事業の条件にはあてはまらないけれど、家事や育児を手伝ってくれる人がいなくて困る家庭が増えています。
松本市では、核家族等で日中の育児協力者がいない人や多胎で出産した人が育児に関する援助を受けられる「育児ママヘルプサービス」や、生後4か月までの赤ちゃんの母親が家事支援を受けられる「産後ママ家事支援サービス」という制度があり、利用料はかかりますが、子育て支援クーポンを使用できます。
飯田市では、母子手帳交付時に産後支援助成券1,000円×10枚が交付され、市が指定する事業者の家事、育児支援サービスを受ける際に使用できます。
長野市にも、産後の家庭が誰かの手を借りたいと思う時に家事、育児支援を受けられる制度が必要です。市の考えを聞きました。
市の答弁→子育て世帯訪問支援事業の支援の流れは、はじめまして赤ちゃん事業として、保健師等がすべての妊産婦に対して面接を行い、家庭訪問での助言や情報提供を通じて、家庭の状況を把握するとともに、児童福祉の担当者も交えて支援の必要性を判断している。これによってすべての出産後の家庭の中から、真に支援が必要となる家庭を漏らすことなく把握し、本事業につなげている。新たな制度の導入については考えていない。
長野市には「ホームスタート」があり、ボランティアの方が親の心を支えてくださっていますが、家事・育児を手伝ってもらえるものではありません。乳幼児期は、生きる力の土台となる「愛着」を育む大切な時です。親がゆとりをもって子どもに関わることができるよう、必要な事業を整備して、予算を充てることを要望しました。
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