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活動報告

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 6月27日の定例会最終日に全議案の討論と採決がありました。すべての議案の議決の結果は長野市議会ホームページで確認できます。

 議案65号令和6年度一般会計補正予算案には、マイナンバーカードを使って、市役所などで申請書類を自動で記入作成するシステム導入にかかる費用6,091万8千円の予算と、アクアウィングのエネルギー供給設備の更新時期のために、今後約16年にわたり天然ガスを使って発電する設備の設置・運転を民間事業者に委託する費用の限度額を18億円とする債務負担行為予算が含まれています。この2項目について、可決すべきとした委員長報告に反対の立場で討論しました。討論の録画は公開され次第こちらの長野市議会ホームページからご覧いただけます。

 マイナンバーカードには本人確認の4情報(氏名・住所・生年月日・性別)と個人番号が表示されており、本人確認の際や、紛失拾得の際などには、これらの情報が一括で漏えいし、不正利用される危険性が大きいということ。戸籍上の性と実際の性自認とが異なる人にとって深刻な精神的苦痛を与える重大な人格権侵害となること。を日本弁護士連合会は指摘しています。また、顔認証データを行政機関、政府が手にし、データベースを完備できるようになることの危険性にも警戒する必要があります。マイナンバー制度は、当初の税や社会保障のための手段という位置づけから、行政の効率化やデータ利活用の手段とされ、民間との情報連携が進んでいます。個人情報の流出のリスクに対する十分な対策、検討がなされた形跡はなく、明確な説明も政府は尽くしていないことも日本弁護士連合会は指摘しています。個人情報保護や肖像権・プライバシー侵害などの人権侵害のリスクへの対策が不十分なまま推し進められるマイナンバーカード利用のための補正予算案には反対です。

 アクアウィングのエネルギー供給設備の更新と、15年8か月に及ぶ運転を民間事業者に委託する費用として18億円を上限に設定し予算化する債務負担行為補正も盛り込まれました。長野市は近隣の自治体と結ぶ長野地域連携中枢都市圏で「2050年ゼロカーボン宣言」に署名。「長野市役所温暖化防止実行計画」を策定して、脱炭素化の実現を目指しています。今後16年にわたり、化石燃料である天然ガスを使った発電システムを運用するのは、再生可能エネルギーへの転換の足かせとなり、経済と環境の両面で次世代に負担を先送りすることになります。毎年多額の運営費を必要とし、再整備に巨額の市債を発行して維持するオリンピック施設へのこのような設備投資には反対です。

 

 

 議案第80号エムウェーブ長寿命化改修工事請負契約の締結案は、3月定例会に続くエムウェーブ長寿命化のための工事請負契約です。この長寿命化改修工事の総事業費は約48億円とされています。先日、札幌ドームの赤字額が当初見込みの2倍になったことがニュースで大きく取り上げられましたが、自主事業で運営費を賄っている札幌ドームと違い、エムウェーブは、運営費の7割を市からの指定管理料で賄っており、自主事業の収入は必要経費の3割ほどしかありません。毎年2億円以上の赤字を長野市が抱えているのが現状です。この経営状況で、オリンピックレガシーの継承とスポーツの基幹産業化を掲げ、長寿命化改修を進める市の方針を立ち止まって検証する必要があります。

 冬季オリンピック施設建設のために借り入れた市債の元利金約694億円は、2017年に返済しましたが、間を置かず、市役所第一庁舎・芸術館、Uスタジアムなどの大規模施設建設プロジェクトで借り入れた市債の返済が始まりました。その返済が落ち着くのを見はからい、現在は、国民スポーツ大会の開催に向けたオリンピック施設の再整備事業を展開しています。

 財政推計によると、令和4年度から6年度の市債残高は、臨時財政対策債の発行減により一時的に減少するものの、オリンピック施設整備などの普通建設事業費の増により、令和4年度と比較して令和9年度には98億円増加し、1,500億円の大台に戻るとされています。経済成長の停滞が続き、少子高齢化が進んだことで、市民が負う公債費の負担は、冬季オリンピックが開催された26年前と比べて格段に大きくなっています。

 長野市の将来人口は、2050年には30万人になり、2080年には20万人に満たない人口が予測されています。人口減少によって税収は減少します。その減少幅に見合った歳出の削減ができなければ、財源不足は拡大し、市民生活に必要な施策が廃止され、市民負担の増大がより深刻になるのは明らかです。

 市民アンケートで「オリンピック施設の将来について全ての施設をできるだけ存続させる」と回答された方は、全体の3%にとどまり、「利用状況などに応じて施設ごとに見直しが必要である」と回答された方が全体の9割を超えています。今、市民が行政にもとめるのは、成長型の社会から、環境・社会教育・地域福祉などに重点を置いた成熟社会へのスマートな移行です。これらの理由により、巨額の費用でオリンピック施設を再整備する予算に反対しました。

以上2つの討論を行いましたが、議案は賛成多数で可決しました。将来世代の資源を使い果たしてしまうような政策によるまちづくりではなく、持続可能な社会を次世代に引き継げるまちづくりができるよう、皆さんと一緒に考え、提案していきたいとおもいます。

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