城山公園の長野市少年科学センターが令和6年4月にながのこども館としてリニューアルオープンするための条例改正案です。条例で定める施設の利用料の上限が、少年科学センターの利用料と比べて大幅に引き上げられました。南部勤労者活躍支援センターの利用料の引き上げと同じく、公共の役割とは何かに関わる問題です。この条例案を可決すべきとした建設企業委員会委員長報告に反対の立場で討論しました。討論の録画は長野市議会ホームページからご覧いただけます。
旧少年科学センターの利用料は、大人260円、高校生150円、小中学生50円で、小学生は無料の日もありました。新しい「ながのこども館」の利用料は、長野市民とそれ以外で料金を分け、市民の料金を安く設定しています。しかし、市民であっても、中学生以上は平日400円、土日祝日は800円。小学生は、平日200円、土日祝日は400円となっており、旧科学センターと比べ、大きく利用料が上がっています。
この議案も、南部勤労者活躍支援センターと同じく、「公共の役割は何か」ということに関わる問題です。先ほども申しましたが、今の社会状況でも、お金のある人はいろいろなところに行っていろいろな体験が出来るでしょう。経済的に余裕のある人が楽しむ施設は、民間がやればよいことで、公共施設は出来るだけお金をかけずに利用できるようにすべきです。長野市では、サンマリーンながのを建て替えた際も料金を大幅に値上げし、それまでのように気軽には利用できない施設になってしまいました。
令和3年度に実施された「長野市子どもの生活状況に関する実態調査」では、生活困難度が高い家庭ほど「博物館、科学館、美術館、遊園地やテーマパークに行かない」と答える人が増え、その理由を金銭的な理由と答える人も増える、特にひとり親家庭では金銭的理由で文化的な施設の利用が出来ないケースが多い、という状況も明らかになっています。必要とされているのは、お金の要らない子どもの文化的施設です。本議案における料金設定では、結果的に生活に困窮する子育て家庭を利用の対象から外すことになってしまいます。
さらに、長野市には屋内の子どもの遊び場が全く足りていません。これまでの少年科学センターは、子育て世帯や子どもたちが、天気や季節に関係なく気軽に利用出来る数少ない施設でした。近隣の小学校を卒業した子は、高学年になって、それまでのように親と一緒ではなく友達と一緒に過ごしたいと思うようになった時に、お金を使わず安心して過ごせる貴重な場だったと話してくれました。「子どもの居場所」は、とても必要とされています。行政は、意識的に子どもたちが居られる場を作っていかなければならないと思います。新たな「ながのこども館」は、低学年までを主な対象とする施設とのことですが、工夫をすることで高学年の子どもも安心して過ごせる場にすることは可能だと思います。しかしこの条例を通せば、子育て世帯や小学校高学年の子どもがお金をかけずに居られる数少ない居場所がひとつ失われてしまうことになります。
城山公園駐車場についても12月25日から有料化するとして、観光地である近隣の駐車場に合わせた料金が設定されています。子育てパスポートを提示すれば2時間無料ということですが、子どもを連れての駐車場からの移動やトイレにかかる時間などが考慮されていません。さらに、公園、動物園、こども館と複数の施設があり、せっかくゆっくり遊べる環境であるにも関わらず、ながのこども館の利用料と合わせると負担がとても大きく、これでは長野市が子育て世帯を応援しているとは到底思えません。駐車場の有料化には、目的外駐車が来園者の駐車に影響することを防ぐと言う理由が示されていますが、現状で普段の平日は駐車場は空いています。休日など混雑する時に限りパスポートなどで対応し、平日は無料でよいのではないでしょうか。このままでは、子どもから高齢者まで、全ての市民にとって、時間を気にせずゆっくりと過ごすことが出来た素晴らしい環境が失われてしまいます。そのことの重大性を、もっと重く受け止めていただきたいと思います。
長野市の公共施設についての「原則、利用者が2分の1負担」という考えを改めないままでは、今までそれぞれの施設で培われてきた市民の居場所やコミュニティがなくなってしまうと強く懸念します。
討論後の採決の結果、この条例案は可決されました。お金をかけずに思い存分に過ごせる子どものための文化施設がひとつなくなってしまいました。