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活動報告

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 6月24日は9月定例会最終日でした。私は議案第47号「令和4年度長野市一般会計補正予算」を可決するものとした経済文教委員会委員長の報告に対する反対討論を行いました。

 当初予算で発行総額30億円としたプレミアム付き商品券の発行冊数を、総額72億円に増額する費用43億3,750万円を盛り込んだ補正予算です(財源は、地方創生臨時交付金4億1,875万円、一般財源4億1,875万円、商品券販売収入35億円)。コロナ渦における物価高騰の影響で落ち込む市内経済の活性化の加速と、更なる消費拡大を図るのが目的です。  

 私は、経済活性化のための消費喚起を否定しません。ただ、これまでも多くの自治体が行ってきたプレミアム付き商品券の効果についての検証は未だに不十分。平成29年に内閣府地方創生推進室が「地域消費喚起・生活支援型交付金事業における効果検証に関する報告書」を出していますが、将来消費の前倒し[先食い効果]や、商品券の適用がある別の商品を購入するケース[横食い効果]についてのデータがなく、またアンケートについて自治体ごとに解釈のブレがあるなど評価が難しいものです。
平成28年に長野市でも「ながのプレミアム商品券」の経済波及効果について分析がなされていますが、商品券の実施期間前後の消費行動についてのデータはなく、業種による効果の差などの分析も不十分です。
この度も商工観光部では長野県の産業関連表を使って経済波及効果の試算を行ったとのことでしたが、やはり実施期間前後の消費行動などが考慮されておらず、効果を計るには十分とは言えません。
プレミアム付き商品券事業に経済波及効果がないとは思いませんが、43億3,750万円を新たに投入するのに見合う効果なのか、現状では説得力のある根拠がないのも事実です。

 そして、令和2年8月臨時定例会でも問題提起をしましたが、これは経済的に余裕がある世帯が、より恩恵を受けられる事業だと言えます。今、1万円、5千円を用意することが難しい方が多くいることは想像に難くありません。商品券を買えた人だけが20%余分に消費できる事業。これによって地元商業は一時的に活性化したとしても、厳しい生活を余儀なくされている世帯が置き去りにされ、地域内格差を広げてしまいます。
一時的な経済効果ではなく、もっと長期的な視点に立って、市内の中小事業者、生活者双方にとって有効な税金の使い方があるのではないか。コロナ対策で国や自治体の借金が膨らみ、それが次の世代の負担となる実態を考えれば、私たちの税金を使ったひとつひとつの事業を、もっと慎重に考えなければいけないと思います。経済の活性化政策は、市民一人ひとりの生活の豊かさにもつながるものとして考える必要があるのではないでしょうか。
定例会初日の福祉環境委員会委員長報告では、子育て世帯生活支援特別給付金からわずかに外れてしまうような生活困窮世帯に対しても、市独自の配慮をするよう要望がされました。子どもの厳しい状況を少しでも改善するために、また制度の隙間でなかなか支援が届かないところにこそ「地方創生臨時交付金」を活用すべきと思います。プレミアム商品券増額だけに臨時交付金を振り向けることに賛成はできません。

昨年行われた「長野市子どもの生活状況に関する実態調査」では、非常に厳しい状況の子育て家庭があることが明らかになりました。
・子どものいる家庭の22%が困窮または周辺家庭
・国の貧困線を下回る水準で生活している子どもの割合は11.2%
・ひとり親家庭の困窮またはその周辺家庭に該当する割合は60.9%
・暮らしの状況が苦しい、大変苦しいと答えたのは困窮家庭85.2%、周辺家庭48.1%、ひとり親家庭では50.2%
・過去1年の間にお金が足りなくて家族が必要とする食料が買えなかった経験があったと答えた家庭の割合は、困窮 家庭で60.4%、周辺家庭23.5%、ひとり親家庭24.6%
・お金が足りなくて衣服が買えなかったことがあったと答えた家庭の割合は困窮家庭77.6%、周辺家庭で37.5%、ひとり親家庭32.1%

 国は、「地方創生臨時交付金」は給食費等の負担軽減に活用できるとしています。
信濃毎日新聞や朝日新聞によると、上田市、大町市、諏訪市、松本市、塩尻市などでは、食材費の値上がり分を臨時交付金で賄う補正予算を6月定例会に提出したとのことです。(大町市は保育園・幼稚園も対象。塩尻市は民間保育所にも燃料費や食材購入費を補助する方針)

 ギリギリの予算でなんとかしのいできた学校給食が物価高騰のあおりを受け、献立や食材の工夫も限界に来ているため、臨時交付金を充てて給食の質を保つと同時に家計の負担増も回避する。前述の自治体が選んだ使途はきわめて公平で効果的だと思います。

 長野市教育委員会は「4月以降、一部食材については値上がりなどしている状況だが、これまでも年間予算の範囲で計画的に献立を工夫するなどして安定的に給食を提供できるよう努めている。今のところ給食費の値上げや急な献立変更などのような大きな影響はない。」と今定例会一般質問で答弁しました。しかし、長野市学校給食センター等運営審議会では、令和3年度の学校給食費について、主食・牛乳・副食の価格について前年度と比較をした上で「主食はわずかに下落したものの、牛乳の価格が大きく上昇したことから、副食に当てられる費用が減少する。しかしながら、令和元年度当初の給食費の値上げもあり令和3年度の価格の上昇分は吸収できる見込みであること、コロナ渦で経済的に厳しい家庭が多いことから、献立を工夫するなどより一層の努力を続けていくこととし、令和3年度における8調理施設の給食費は据え置きとする。」と報告がされました。

 長野市においても、ギリギリの状況で工夫と努力をされてきたことが伺えます。現在の物価高騰で、給食費を据え置きながら質を保つのは無理があるのではないでしょうか。また、その対応のために、栄養士さんや調理員さんなど現場の方たちに大きな負担がかかってはいないでしょうか。
「今後の物価の動向により新たな給食費の負担がかかることのないように、臨時交付金の活用について関係部局と検討しているところである」との答弁もありました。

 家計が厳しくなる中、子どもたちの健やかな成長にとって、給食の質はこれまで以上に重要になると思います。十分な給食を安定して提供できるために、学校給食と保育園等の食材料費への補助をするべきであると考えます。
以上の理由で、今回の補正予算案に反対し、議員の賛同を呼びかけましたが、賛成多数によりこの議案は可決されました。

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