信州・生活者ネットワーク
ながの
まちづくりクラブ

活動報告

活動報告一覧を見る

6月定例会では「子どもの権利条例」について質問しました。

質問の本会議録画中継はこちらの長野市議会ホームページからご覧いただけます。

「児童の権利に関する条約」を日本が批准してから28年。しかし残念なことに、子どもが巻き込まれる犯罪や児童虐待、いじめ、体罰などの重大な子どもの権利侵害が数多く報告されています。

 昨年「長野市子どもの生活状況に関する実態調査」が行われ、1250人の子どもから回答がありました。
「自分は価値のある人間だと思わない」32,8%
「自分のことが好きだと思わない」36,4%
「自分は家族に大切にされていると思わない」6,9%
「よく頭やお腹が痛くなったり、気持ちが悪くなったりする」37,0%
「ほかの子どもからいじめられたり、からかわれたりする」14,4%

自分や家族のことなどで、心配なことや困っていることはあるかの問いに対し、
「家族で楽しく過ごすことが少ないこと」5,7%
「弟や妹の世話をするのが大変なこと」4,2%
「大人から強くしかられたこと」5,2%
「大人から心を傷つけられる言葉を言われたこと」5,3%

困っていることや悩みごと、心配ごとがあるとき、誰に相談するかの問いに対し「相談できる人がいない」2,5%。
自由記述には、
「クラスでいじめをしている人が少しいるから止めたいが、そしたら自分がいじめられるかもしれないと思うと勇気が出ない。」
「部活で顧問のコーチが厳しすぎて辞めてしまった友だちが、食事をする元気もないほどになってしまっていて心配。」などの記載がありました。

 平成29年「長野県子どもと子育て家庭の生活実態調査」では、次のようなことをされて嫌な思いをしたことがあるかの問いに対し、
「大人にたたかれる、殴られる」6,4%
「心を傷つけられる言葉を言われる」8,9%
「身体を触られるなど、性的に嫌なことをされる」0,9%、そのうち「相談しなかった」が52,5%

 令和2年度の長野県内の子どもの性犯罪被害は52件

 令和3年に県が実施した「学校におけるヤングケアラーへの対応に関するアンケート」でヤングケアラーの定義に当てはまる生徒がいると答えた学校は、
全日制で46,8% 定時制で78,9%。

 令和3年度の長野市の調査では、虐待に関する家庭児童相談2772件、小中学校のいじめ認知件数1987件。
いじめ重大事態の発生1件、継続中または進展中1件、小中学校の不登校児童生徒数653人。体罰に係る県調査において、長野市の小中学校児童生徒、保護者、教職員で「体罰あり」と答えた件数106件。そのうち「体罰である」と判断されたもの2件。「体罰ではないが、不適切な指導」と判断されたもの11件。

 「長野市子どもの生活状況に関する実態調査」では、数字では表れにくい子どもと家庭の困難な状況を把握するために支援関係者へのヒアリング調査も行われました。
調査の結果、どのような問題が見えたのか。また、長野市の子どもたちの権利の状況について、どのように分析されているかをこども未来部長に質問しました。

~日台こども未来部長の答弁~
「長野市子どもの生活状況に関する実態調査」は子どもの現在および将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう子どもの貧困対策を総合的に推進することとした子どもの貧困対策推進に関する法律に基づき行ったもので、長野市子どもの貧困対策計画を本年策定するにあたりその基礎資料とするために昨年10月から11月にかけて本市の子どもが置かれた状況を把握するため実施したもので、子どもを権利の主体者として実施した意識調査とは目的を異にする。

 調査ではアンケート調査とは別に数字では表れにくい子どもや家庭が置かれた状況や背景、必要な支援等を聞き取るため、普段から子どもたちに直接接しているNPOや主任児童委員学校やスクールソーシャルワーカー、児童相談所や乳児院、児童養護施設等を対象にヒアリング調査を実施致しました。
ヒアリングでは様々子どもや家庭の状況を聞き取ることができましたが、一つの事例をご紹介すると、経済的な余裕がない家庭で親が手料理を作らず、子どもに菓子パンを買い与え食べさせていた事例がありました。この子どもには歯磨きの習慣づけがなされていなかったため、虫歯になってしまったのですが、経済的に苦しいことを理由に必要な受診・治療ができていないとのことでした。将来的には 虫歯が原因で十分な栄養が摂れない事や肥満に起因する疾病も危惧されるとのことでした。他にも風呂に入らない頭を洗わないなどの衛生的に問題のある事例や親からの愛情が不十分で愛着形成ができていない子ども、ヤングケアラーとみられる子どもについても事例を関係団体から聞き取ることができました。
また保護者や家庭の課題としては親自身が虐待を受けて育っていたり、育児の知識や経験が不足していたりするために養育力が低い親がいる事や、身近に相談できる人や支援してくれる人がいないため、子どもとのかかわり方が分からず、ネットの情報に依存している親がいる事、更に精神疾患を抱えるなどにより金銭管理能力が低い親がいるなどの声が聞かれました。他にも様々な声が挙げられていますがヒアリングからは厳しい状況に置かれた子どもたちの生々しい状況を聞き取ることができました。

 このように子どもたちの調査では子どもの権利が損なわれているのではないかと懸念される状況が垣間見られたものと受け止めています。また子どもの貧困対策法において子どもの貧困の解消に向けて児童の権利に関する条約の精神に則り子どもの最善の利益が優先考慮されるよう努めるものとされています。また児童の権利に関する条約に示されている子どもの権利擁護の視点は多岐にわたっていることから、貧困という視点から伺い知ることができる状況はその一部に過ぎないものの、大変重要な視点であると考えています。

 市としましては、児童権利条約の精神に則り長野市子どもの貧困対策計画の策定にあたっては、厳しい状況に置かれた子どもがいる事やアンケート調査で見えてきた課題や背景にあるさまざまな社会的要因を踏まえて、貧困の連鎖を断ち切るよう取り組んで参ります。併せてすべての子どもが社会において一人の人間として尊重され夢と希望をもって成長していけるよう必要な施策を検討して参ります。~日台こども未来部長の答弁終わり~

次に、荻原市長に子どもの権利条例制定についてのお考えを聞く質問をしました。


 大変厳しい状況に置かれた子どもの様々な課題は、長野市だけのものではありません。他の自治体でも子どもの権利の現状が明らかになるにつれ、「自分を好きになれない」「希望が持てない」「生きることがつらい」と感じている子どもたちの思いを受け止め、本来、すべての子どもたちが持っているはずの「いのちの輝き」を取り戻すためにどうすればよいのか、重大な課題として認識されるようになりました。そして、子どもの権利を守る取り組みを推進するために、その根拠となる条例を定める自治体が増えています。

 長野市では、これまでに全ての会派の議員から、子どもの権利条例の必要について質問がなされていますが、平成26年に「長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例」が施行されて以降は「県に条例があるので市には条例がなくともよい。」という答弁が繰り返されてきました。

 荻原市長は令和3年12月議会において、「県条例により子どもの人権救済のための調整機能が既に確立されており、本市の子ども達を含めて県内全体での子ども支援を総合的に推進し、子どもの最善の利益を実現できていると捉えている。」と答弁されました。
はたして子どもの最善の利益は実現できているでしょうか。

 松本市では平成25年に子どもの権利に関する条例が施行され、条例に基づいて「子どもの権利擁護委員」と「子どもの権利相談室こころの鈴」を設置し、3名の擁護委員と4名の調査相談員が活動しています。
子どもたちの悩み、苦しみ、苛立ち、切なさ、つらさ、そして喜び、わくわくに耳を傾け、一人ひとりに寄り添っていく、として子どもたちの思いを受け止め、一緒に考え、子ども自身が決めた道に踏み出せるための支援を行っています。大人からの相談であっても、子どもの意思を確認するところから始まり、その後に、子どもに関わる各機関に事実確認をしたり、専門性を生かした対応の依頼をするなど、問題解決のための調整をして関係の修復を図ります。
令和2年度の相談実件数は205件、延べ件数408件、各機関との連携・調整は28案件、延べ55回。
子どもの意思を尊重したきめ細かな対応により、先生の厳しい指導や友だちからの暴力で学校に通えなくなってしまった子どもが、関係を修復して安心して学校に通えるようになった、虐待の相談をためらっていた子どもが、悩んだ末におとなの援助を受け入れることを決め、支援につなぐことができたなど、子どもの権利回復の事例が報告されています。令和2年度は、子どもの権利と相談室について知ってもらうために、「こころの鈴通信」を4回発行して小中学校、特別支援学校、高等学校に配布。
条例に定められた「松本市子どもの権利の日」に合わせて市内小中学校全校で校内放送も行いました。更に、児童館・児童センターを訪問して子どもたちに向けて出前講座を行い、81件の相談につながりました。また、条例に基づき策定された「子どもにやさしいまちづくり推進計画」の事業として、相談室長が市内の高等学校13校に出向き連携を依頼、高校1年生を対象に「こころの鈴クリアファイル」を配布しました。

 市長は令和3年12月議会の答弁として、「子どもたちに権利はしっかり守られているんだということを周知して、子どもたちからの声を聴く場を設けて、人権に及ぶ事案を相談の中から救済支援につなげていくことが大事と考えている。」「子どもも大人も、子どもの権利条約の精神を理解し、一人ひとりの日々の生活の中に生かしていくことが大切である。」
「子どもたちに、いやなことをいやと言うことや誰かに相談したりすることなどのみんなの権利が守られているということをしっかり伝えていくことが県と連携して子どもの権利を守る上で何よりも重要」と述べられています。子どもたちに「あなたはかけがえのない大切な存在。権利を守るために勇気を出して相談して。一緒に考えるよ。」というメッセージをしっかりと届けるために、基礎自治体でなければできないことがたくさんあります。松本市のように、子どもの権利を守るための条例を作り、子どもの権利を守る仕組みを整備することが必要ではありませんか?市長のお考えをうかがいました。

~荻原健司市長の答弁~
子どもの権利条例についてお答えいたします。児童の権利に関する条約いわゆる子どもの権利条約は1989年に国連総会において採択され、日本では1994年平成6年に批准をしております。この条約は、生きる・育つ・守られる・参加するの4つの子どもの権利を柱としており、とかく弱者に不利益がもたらされがちな社会においてすべての人が心に刻むべき理念であると受け止めております。

長野市子どもの生活状況に関する実態調査においては、子どもたちをめぐる貧困やヤングケアラーなどの課題を垣間見ることができた一方で、行政だけでなく社会全体で市民一人ひとりが日々の生活の中で子どもの権利を意識して守る行動を実践していくことが何よりも重要ではないかと考えています。
松本市では県に先立ちまして条例を制定し取り組んでおられることを承知しております。一方で、その後、県が制定をいたしました長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例によりいじめや虐待をはじめとした子どもの人権に関する救済のための調整機能が確立されており、長野市の子どもたちも含めて県内全体で子どもの支援を総合的に推進し、子どもの最善の利益を実現できていると捉えております。
子どもの権利を守る具体的な仕組みにつきましては、相談と救済という大きく2つの場面がございます。救済につきましては長野県子ども支援委員会において専門性の高い調査・審議が行われることから全県を統一した機関にゆだねることが望ましいと考えておりますが、一方の相談に関しましては基礎自治体として工夫をして取り組む余地があると思います。
そこで本市としましては、新たに市のホームページで子どもの権利に関するページを新設をしまして広く市民に周知を図っていきます。
4月からオープンした子ども支援センターが子どもの権利を守るための相談窓口ともなりますし、今後、教育現場で進める事としておりますひとり1台タブレットを活用していただきながら子どもたちから直接相談を受け付ける重要なツールになることも期待をしております。
このように県と基礎自治体がお互いの適正を活かして適切な役割を果たしながら未来の長野市の主役である子どもたちの権利を守っていきたいと思います。~荻原市長の答弁終わり~

 今、悲しい想いをしている子どもがいる。残念な市長答弁でした。
直近では新潟市などで議員提案で条例を作った自治体もあります。
条例を制定するのは議会。条例づくりは議員の仕事。「議員の皆さん共に頑張りましょう。」というメッセ―ジを込めて質問を終えました。

タグ: , , , , , ,

ページのトップへ